【書評】発達障害フリーランス(著:銀河)を読んで感じた事

今回は、株式会社翔泳社さんから出版されている「発達生涯フリーランス 属さない働き方のすすめ」という本について、僕が読んで感じた事や、役に立つと思った情報について書いていきます。

結論から言うと、この本は僕のような「発達障害(の疑いがある)」かつ「フリーランスを目指している(または駆け出し)」人にとって「バイブル」と言って良いレベルの良著でした。

発達障害の特性があり(会社員を続ける事が難しいために)フリーランスになりたい人は、購入して手元に置き、辞書のような感覚で使っていくのが良いと思います。(僕もそうするつもりです)

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以下、本の内容に沿って書いていきます。

第1章 発達障害はフリーランスに向いている

本書の第一章は「発達障害とフリーランスの相性(の良さ)」が主題として書かれているように感じました。

僕自身が会社を辞めた理由の大半が書かれていて、読んでいて「うん、うん」と頷きっぱなしでした。

以下、少し内容を要約してみました。(引用ではなく、自分なりの解釈も含みます)

  • 発達障害者は「好きな事」を突き詰めて発展させる事が得意
  • マイペースに働ける方が良い
  • 場所、時間、人間関係のストレスが少ない方が良い
  • 自分の「夢の実現」を仕事にする事ができる
  • 体調やスケジュールの管理がしやすい

フリーランスなら(代償が無いわけではありませんが)こういった働き方を実現することが出来ます。一方、一般的な会社員はどうかと言うと…

  • 仕事の大半は「好きではない事」なので発展が難しい
  • マイペースに働ける訳がない(周りの人に合わせないといけない)
  • 場所も時間も固定、人間関係のストレスだらけ
  • 会社の「利益創出」のための仕事しか出来ない

と言った感じで、私が実際に体験してきた「会社員」はまさに発達障害者には「全く」と言って良いほど向かない働き方だったのだ…という事を痛感しましたね。

また、著者は本章のどこかで「人間関係が上手くいかず、死を考えた事がある」と書かれていましたが、私も全く同じで、屋上などの高い所でふと「ここから落ちたら楽になれるのかなぁ」なんて考えた事があります。

発達障害者にとって、人間関係は「上手くいかないのが当たり前」ですから、そもそも人間関係を(必要最低限以外は)築きたいと思わない人も多いでしょう。

余談ですが、著者は経理が大の苦手だそうです。僕も仕事が経理になった瞬間にパンクしましたから、発達障害と経理ってかなり相性が悪いんでしょうか?(笑)

(経理がとことん好きな発達障害の方も居るでしょうから…これは単に僕が経理に向いていなかったというだけの話ですね)

第2章 「得意」の見つけ方と仕事に繋げる方法

流石に1章のような感じで全ての章について書いてしまうと「ネタバレが酷すぎるだろ」と怒られそうなので、ここからは自分が「これだ」と思った事だけ紹介していきます。

2章では、フリーランスとしてやっていくために「得意」を見つける事、そしてそれを仕事に繋げる方法について書かれています。

多くの人が「得意」というと「オンリーワン(のような強み)」を想像してしまうと思いますが、本書では「少しだけ尖っていれば良い」「(少しでも)成果が出れば良い」といった感じで、「得意」のハードルを上げ過ぎないよう、とにかく行動する事をオススメしているように感じました。

会社員は基本的に失敗が許されませんが、フリーランスは取引先を1つ2つ失っても無数に「次」があります。要するに「とりあえず行動してみる→失敗してもダメージは軽微→どんどん次に行こう」という動きができる訳です。

人によっては数ヶ月〜半年、1年と芽が出ない「つらい時期」もあるのですが、著者はそれも「自分のコアな目標を見つけるための時間(チャンス)」と前向きに捉える思考法を提案されています。

僕はこの生活に入る前に「とりあえず、安定性があって即金性がある仕事をまずは探そうかな」なんて考えていたのですが、本書を読んで「それじゃ、フリーランスを選んだ意味がないじゃないか」と思いを改めました。

本書を読んで、僕がこれからどう動くかの「指針」が出来たように思います。

  • 仕事をパッと見でアリかナシか判断しない(苦手か得意かはやらないと分からない)
  • 常に2〜3個の異なる仕事に並行して挑戦する
  • 「失敗」を過度に恐れない(成長の種になる)

書き出してみると「ありふれた指針だなぁ」という感じもしますが、これは僕の噛み砕き方が悪いのだと思います(苦笑)本書ではもう少し具体的に指針を書いてくれているので、気になった方は読んでみてください。

僕の場合、既にブログという形での稼ぎ方では走り始めているので、あと2つ、何か新しく「やってみたいと思った事」を同時進行していきたいです。

第3章 フリーランスになる準備

本章では、会社員からフリーランスに転向するための準備について、非常に事細かく記載されています。

独身または子供が居ない方にとっては、本章で記載されている「失業保険」や「障害年金」を有利に活用する方法は非常に参考になると思います。

ただし、僕のような「子供を持つ親」にはこの方法は使いづらいんだよな…と考えてしまいました。

僕は日頃から「この国は真面目に少子化対策をするつもりがない」と感じているのですが、その理由の一つに「失業したら即座に子供が保育園から追い出される」という非常な現実※があります。

※自治体によっては猶予期間があったりもします。これが全国で統一されていない辺りがもうね…

例えば僕が住んでいる自治体では「無職期間が1ヶ月を超えたら即退園」という厳しいルールがあります。つまり、例え会社を辞めた後に失業給付金を長く受けられる事になったとしても、子供が保育園を追い出されるので、育児と個人事業を同時進行しないといけなくなります。

発達障害を持つ人は、基本的に「マルチタスク」が苦手な傾向があります。僕もそうで、仕事と家庭が両立できなかったからこそ会社員を辞めた訳です。そんな僕がこんな状況に陥ったら…それこそ気が狂ってしまいます。

なので、僕は失業給付金については最初っから諦めていて、フリーランスになる場合は退職後すぐに「個人事業主としてやっていきます」という届出を自治体に提出し、子供が保育園を継続できるようにするしかない…という結論を出していました。

まぁ、僕の話はここまでにしておきましょう(苦笑)

僕の場合、本章で紹介されている「失業給付」といったテクニックは使えませんでしたが、それ以外は非常に参考になりました。

特に「クラウドソーシングよりも求人サイトなどで仕事を探すと良い」というのは目からウロコでした。僕は基本的には「クラウドソーシングで実績を積むしかない」と思っていたので、普通の求人サイトは全くチェックするつもりが無かったからです。

1週間に1回(◯時間)といった仕事も転がっているようなので、こういった物に応募するのも面白いなと思いました。(いきなり毎日◯時間みたいな仕事に挑戦したら、パンクするのは目に見えていますからね)

あとは「求人票に書いてあるスキルを習得する」というのも面白いなと思いました。

まぁ、普通に考えたら「当たり前」の事なんですけど…これからフリーランスでやっていこうと考えた時に「普通に求人票に書かれているスキルなんて(習得しても)使えないんじゃないか?」なんて思ってしまっていたんですよね。

これも「オンリーワンの力が無いとフリーランスではやっていけないんじゃないか」という思い込みが成せるワザです。

加えて、僕は自身の経験上「資格だけ取っても何の意味もない」という考え方が頭に焼き付いています。実際に、凄い資格を持っているのに全く働かない・性格に問題アリという人を何人も見てきたので、上級資格を持っている人=ただの資格マニアという偏見がありました。

でも、そもそも資格がなければトライすら出来ない仕事も当然あるんですよね。なので、やっぱり資格は大事なのです。

特に「特定のソフトが扱える事」と言った具体的な資格要件であれば、目標が具体的になるので動きやすいですよね。フリーランスでも「求人票で求められているスキル」を調べて習得するのって凄く大事な事なんだなと思いました。

後は、本書で紹介されていた「障害者手帳を取る」というのも凄く大事な事だと思ったので、退職のどさくさで後回しにしていた「自分は本当に発達障害なのか」という所もハッキリさせようと思いました。

自分が住んでいる県には大人の発達障害を見てくれる病院※がほとんどなく、予約が必須なので数ヶ月は待たされると思います。でも「障害者控除」が使えればでフリーランスでやっていく難易度も変わってくるでしょうし、やるだけやってみるのが良いと思います。

※病院ではない施設(カウンセリング専門)で臨床心理士さんにやってもらう手もあるようですが、非常に高額なので出来れば避けたい所です…

最後に、本書では「目標は行動目標で立てよう」という指南もあります。

目標に期限を設けて、具体的な数字を入れる事が重要なんですね。今の僕だったら、「4月は個人事業で10万円稼ぐ」「そのために2月〜3月は準備する」といった感じで具体的に数字が入った目標を立てると良いでしょうか。

第4章〜6章について

第1章〜3章の内容だけで非常に長くなってしまったので、ネタバレをし過ぎないという意味でも4章〜6章については概要的な感じでまとめておきたいと思います。

第4章では、フリーランスになった後の話が具体的に書かれています。

無理のない「営業」のやり方、仕事が来た時に(最低限)気を付けるべき事、優先事項の確認方法や相場を知ることの重要性など、実際に仕事を始めた後に起こり得る様々な事項について分かりやすく解説されていました。

この中で僕が「あ、これはヤバイな」と思ったことは「インボイス制度」でしたね。本書ではここは詳しく述べられていないので、他の書籍で勉強しないといけないな…と思いました。

第5章はトラブルへの対処がメインになっていますが、この章の内容は僕が長いサラリーマン経験で学んだ事がいくつかあったので、「経験が活かせそうだな」と感じる事は多かったですね。(クレームが来たら先ずは謝罪をし、相手をクールダウンさせてから話をする等)

ただし「社交辞令はあえて空気を読まずに拾って(次に繋げる布石にしても)良い」といった「なるほど」と思うような事も書いてありましたし、感情的にならないための思考法など、まだまだ自分が知らない対処方法もあったので勉強になりました。

フリーランスと言えど、人間関係の悩みが消える訳ではありません。

顧客の中には「この人、ちょっとおかしいぞ…」と思うような人も必ず出てくるでしょう。しかしながら、その仕事が終わる(入金される)までは縁を切る事が出来ないので、感情のコントロール方法はいくつか持っておいた方が良いでしょうね…

第6章は、発達障害の特性を持つ人がフリーランスを続けていくための心構えや生き方についての内容でした。内容は割愛しますが、どれも発達障害の特性のある人は気を付けるべき事だと思いましたし、一つずつしっかりと実践していくべきだなと感じました。

最後に…実は、僕は本書の「はじめに」と「あとがき」の部分に非常に心を動かされました。

「はじめに」の所でメチャクチャ共感して、その後は本の半分くらいまで一気に読み込んだのを覚えています。

読んでいて思ったのは「この人はまるで僕の生き写しみたいだな」という事。苦労の仕方がまんま僕じゃないか…と。

発達障害の当事者にしか分からない「様々な(目に見えづらい)苦難を乗り越えてここに来たのだろう」という事が文面から伝わってきました。そして、それでも発達障害を「強み」に変えて頑張っていこう!という強い意思も感じました。

僕も、願わくば発達障害を「強み」に変えて、フリーランスとしての人生を歩み、同じく発達障害の特性を持って生まれてきた我が子に自分の背中を見せてあげられるような人間になりたい!と、決意を新たにしました。

最後に:本書は「手元にあってこそ輝く」本だと思います

本書は第1章〜第6章まで、非常に内容が充実しているにも関わらず、ページ数がそれほど多くはありません。読書に慣れている人であれば、半日くらいで読了する事も出来るでしょう。

しかしながら、こういう薄めの本にありがちな「内容が薄いので立ち読みで十分」というような代物ではありませんでした。

図書館で2週間という期限付きで借りてきたものの、読了後も何度も見返し、この書評を書くために要点をまとめたりしていたら、あっという間に返却期限になってしまいました。

「あぁ、もっとこの本の内容を頭に入れたいのに…」という感じで、泣く泣く返却しました。

この本は、発達障害特性がなくとも「フリーランスとしてやっていきたい」と思う全ての人にとって有益な本ではないか?とすら思っています。

もちろん、実際にフリーランスで長年経験を積んでいる人が見れば「こんなの、誰でも書けるよ(知ってるよ)」なんて言うかもしれませんが…僕のように未経験でフリーランスのフの字も知らないような人間からすると「よくぞここまでまとめてくれた」という感謝しかありません。

早速、アマゾンでポチっと購入しました。僕がフリーランスで居続ける限りは、きっとこの本は何度も読み返すことになるでしょう。

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